コラム

蜂窩織炎とは?訪問看護で押さえたい症状・観察ポイントと対応

蜂窩織炎とは?訪問看護で押さえたい症状・観察ポイントと対応

蜂窩織炎とは、皮下脂肪組織に細菌が入り込んで起こる感染症です。足や顔、腕などに発赤、腫脹、熱感、疼痛が現れることが多く、発熱や悪寒を伴う場合もあります。

「虫刺されだと思っていた」「少し腫れているだけだと思った」といった皮膚の変化から、蜂窩織炎が疑われるケースに出会うことがあります。特に糖尿病や浮腫がある方、免疫機能が低下している方では注意が必要です。

この記事では、蜂窩織炎の基礎知識を押さえながら、訪問時に確認したい症状、医師への報告、療養中の観察、再発予防のポイントを解説します。

蜂窩織炎とは?原因菌と起こる部位

蜂窩織炎は、皮下脂肪組織へ侵入した細菌による感染症です。国立長寿医療研究センターは、レンサ球菌やブドウ球菌が創傷や足白癬の部位から侵入して起こると説明しています。

NHSによると、蜂窩織炎は下肢に起こることが多いものの、体のどの部分にも生じる可能性があります。発赤や腫脹に加えて、疼痛や熱感を伴うことがあります。 蜂窩織炎そのものは、人から人へうつる病気ではないとされています。ただし、皮膚の創傷は細菌の侵入口となるため、訪問時には患部だけでなく、周囲の皮膚状態や清潔保持の状況も確認します。

蜂窩織炎の主な症状と発赤の特徴

蜂窩織炎では、皮膚の一部に発赤や腫脹が現れ、患部は熱感や疼痛を伴うことがあります。

主な症状は以下のとおりです。

  • 発赤・腫脹
  • 熱感
  • 疼痛・圧痛
  • 発熱・悪寒・倦怠感
  • リンパ節の腫脹
  • 水疱や膿などの皮膚症状

蜂窩織炎の発赤は、境界がはっきりしないことがあり、また最初は小さな発赤でも、時間とともに広がる場合があります。そのため訪問看護では、発赤の範囲がどう変化しているかを見ることが重要です。

蜂窩織炎の原因とリスクが高い人

蜂窩織炎は、細菌が皮膚のバリアを越えて侵入することで起こります。明らかな傷が見つからない場合もありますが、訪問時には感染の侵入口となり得る皮膚トラブルがないかを確認します。

感染のきっかけとなりやすいものには、外傷、潰瘍、真菌感染症、その他既存の皮膚疾患による皮膚バリアの障害などとされています。

また、リンパ浮腫などの浮腫、糖尿病、免疫機能の低下などがある利用者さんでは注意が必要です。

下肢に症状がある場合は、患部だけでなく足趾間を含めて足部を観察し、足白癬や創傷、皮膚の亀裂などがないか確認します。特に糖尿病性神経障害がある利用者さんでは、感覚低下によって外傷や皮膚トラブルの発見が遅れることがあるため、痛みの訴えがない場合も注意が必要です。

蜂窩織炎を疑うときの受診の目安

蜂窩織炎を疑う皮膚症状を認めた場合は、局所症状と全身状態を確認し、必要に応じて主治医へ報告して受診の要否を相談します。特に、次のような変化がある場合は、速やかな報告や受診調整を検討します。

  • 発赤や腫脹が短時間で広がっている
  • 強い疼痛がある
  • 発熱や悪寒など全身症状がある
  • 水疱や膿がみられる
  • 顔や目の周囲に症状がある
  • 腫脹や疼痛で歩行が難しい
  • 糖尿病や免疫機能の低下があり、皮膚症状がみられる
  • 活動性低下、食事・水分摂取量低下など、普段と異なる全身状態の変化がある

「蜂窩織炎かどうか」だけに目を向けるのではなく、症状がどの程度の速さで変化しているのか、全身状態に影響しているのかを捉えることが大切です。

蜂窩織炎の治療と療養中の注意点

蜂窩織炎の治療では、原因となる細菌に対して抗菌薬が使われます。MSDマニュアル家庭版によると、症状が軽い場合は内服薬で治療することがありますが、症状が強い場合や全身状態が悪い場合は、入院や点滴治療が必要になることもあるとされています。

     在宅療養中は、処方された抗菌薬が指示どおり内服できているかを確認します。高齢者や服薬管理が難しい利用者さんでは、「薬が処方されている」ことと「実際に服用できている」ことを分けて確認することが重要です。

また、患部が下肢の場合は、可能な範囲で安静にし、患肢挙上が行われることがあります。
訪問看護では、医師の指示や利用者さんの状態を踏まえ、在宅で安静や患肢挙上を実施できているかを確認します。あわせて、疼痛や腫脹によって歩行や日常生活への影響も観察します。

蜂窩織炎と間違えやすい病気

発赤、腫脹、熱感があるからといって、必ずしも蜂窩織炎とは限りません。

接触皮膚炎、うっ滞性皮膚炎、湿疹、丹毒などでも類似した皮膚症状がみられます。また、片側の下肢が急に腫れて疼痛がある場合には、深部静脈血栓症なども鑑別に挙がります。

訪問看護では、診断につながる情報を整理して医師へ共有することが重要です。

「いつから始まったか」「どこからどこまで症状があるか」「どのくらいの速さで変化しているか」に加えて、発熱、疼痛、創傷の有無、既往歴、服薬状況、浮腫、歩行状態などを確認します。

普段から浮腫がある利用者さんであれば、「いつものむくみと何が違うのか」という視点も重要です。

訪問看護での観察・記録ポイント

蜂窩織炎が疑われる場合や治療中の場合は、一時点の状態だけでなく、経時的な変化を追える記録を意識します。

観察したいポイントは、以下のとおりです。

  • 発赤の部位・範囲・広がり
  • 腫脹・熱感
  • 疼痛・圧痛の部位と程度
  • 水疱・膿・創傷・足白癬など皮膚の状態
  • 体温・悪寒・倦怠感などの全身状態
  • 食事量や水分摂取量
  • 歩行やADLへの影響
  • 浮腫の程度と普段との違い
  • 抗菌薬の内服状況
  • 治療開始後の症状の変化

糖尿病がある方では、血糖管理の状況に加えて、足部の皮膚状態も確認します。

発赤の広がりを経時的に確認するため、医師や看護師の判断で発赤の外側をペンでマーキングすることがあります。写真で経過を記録する場合は、事業所のルールに従い、利用目的を説明したうえで、利用者さんの同意を得るなど、個人情報の取り扱いに十分配慮します。

記録では、「発赤あり」だけで終わらせず、部位、範囲、経時的変化、随伴症状まで具体的に記載すると、多職種と共有しやすくなります。

たとえば、次のように記録します。

「右下腿前面に手のひら大の発赤あり。熱感・圧痛あり。昨日より発赤範囲が外側へ拡大。体温37.8℃。歩行時に疼痛あり。足趾間に白癬様の皮むけを認める。」

治療開始後であれば、

「左足背に発赤と腫脹あり。水疱なし。発熱なし。抗菌薬内服2日目。発赤範囲は昨日より縮小傾向。疼痛は軽減している。」

など、治療前後の変化がわかるように記載します。

医師へ報告するときの内容

医師へ報告する際は、前項で観察した情報を「現在の状態」「経時的な変化」「全身状態」「治療状況」に整理すると伝わりやすくなります。特に、前回訪問時から何が変わったのかを明確にします。    

報告例としては、以下のように整理できます。

「昨日から右下腿に発赤あり。本日、発赤範囲が足首から膝下まで拡大。熱感と圧痛あり。体温38.2℃、悪寒の訴えあり。歩行時の疼痛が強く、普段より移動が困難。糖尿病あり。蜂窩織炎を疑う所見があり、症状が拡大しているため、受診について相談したいです。」

「蜂窩織炎です」と診断的に伝えるのではなく、観察した事実と経過を具体的に伝えたうえで、何について相談したいのかを明確にすることがポイントです。

再発を防ぐためのケア

蜂窩織炎は再発することがあります。症状が改善したあとも、細菌の侵入口となる皮膚トラブルや、再発につながる背景を確認していきます。

日々の訪問では、皮膚の清潔保持と保湿、小さな創傷やかき壊しの有無、足白癬、皮膚のひび割れ、浮腫、靴ずれなどを確認します。

特に下肢の蜂窩織炎を繰り返す利用者さんでは、足白癬や皮膚の亀裂など、感染の侵入口となり得る皮膚トラブルがないか継続して確認します。

また、セルフケアが可能な利用者さんには、「赤みが広がる」「熱を持つ」「痛みが強くなる」「発熱する」といった変化があれば早めに訪問看護師や医療機関へ連絡するよう説明します。 本人だけで皮膚の観察が難しい場合には、家族や介護職とも観察ポイントを共有しておくと、訪問日以外の変化を捉えやすくなります。

まとめ

蜂窩織炎は、発赤、腫脹、熱感、疼痛などの局所症状に加え、発熱や悪寒などの全身症状を伴うことがある細菌感染症です。

訪問看護では、蜂窩織炎かどうかを診断することではなく、「普段と何が違うのか」「どのくらいの速さで変化しているのか」「全身状態に影響しているのか」を捉えることが重要です。局所の皮膚所見だけでなく、全身状態やADL、治療後の変化も経時的に観察します。

異常を認めた際には、観察した事実と経過を具体的に医師へ共有し、必要な受診や治療につなげます。また、症状が改善したあとも、足白癬や創傷、皮膚の乾燥、浮腫などを継続して観察し、再発予防につなげることも訪問看護師の重要な役割です。


監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者
HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。

【参考文献】

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